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公共工事や物品調達などの「公共の仕事」は、誰とどうやって契約するかが法律であらかじめ決められています。その中心になるのが 一般競争入札・指名競争入札・随意契約 という3つの契約方式(+せり売り)です。言葉は似ていますが、参加できる人の範囲も、事業者が受注を狙ううえでの動き方も大きく変わります。この記事では、地方自治法など公的な根拠にもとづいて、3つの方式の違いをやさしく整理します。
- 公共の契約は 一般競争入札が原則(広く募って価格で競争)。
- 例外として 指名競争入札(指名された業者だけで競争)と 随意契約(競争によらず直接契約)がある。
- 2025年に少額随意契約の上限が大幅アップ = 小規模な工事・物品の受注チャンスが拡大。
公共調達の契約方式は法律で決まっている
地方公共団体(都道府県・市区町村)の契約方法は、地方自治法第234条に定められています。同条第1項は、売買・貸借・請負その他の契約を「一般競争入札・指名競争入札・随意契約・せり売り」の方法で締結すると規定し、第2項で 一般競争入札が原則、指名競争入札・随意契約・せり売りは政令(地方自治法施行令)で定める場合に該当するときに限り使える、としています。
つまり「まずは広く競争にかける(一般競争入札)」が大原則で、ほかの方式はあくまで例外です。なお国(各省庁)の契約も考え方は同じで、会計法第29条の3が一般競争を原則と定め、例外は予算決算及び会計令(予決令)で規定されています。根拠となる法令が、地方と国とで分かれている点だけ押さえておきましょう。
① 一般競争入札(原則の方式)
一般競争入札は、参加資格を満たす不特定多数の事業者を公告で募り、入札で競争させて、もっとも有利な価格を提示した者を契約相手とする方式です。地方自治法第234条第3項では、競争入札(一般競争入札・指名競争入札)について、原則として最高または最低の価格を申し込んだ者を落札者とする、と定められています(公共工事や物品調達では通常「最低価格」)。
- メリット:参加機会が広く開かれ、競争性・透明性・公正性が高い。
- デメリット:手続きが重く時間がかかる。価格競争に偏ると品質確保が難しくなる場合がある。
品質面の弱点を補うため、実務では「入札参加資格」で一定の実力を担保したり、価格だけでなく技術提案も評価する「総合評価落札方式」を併用したりします。
② 指名競争入札
指名競争入札は、発注者があらかじめ選んだ(指名した)複数の事業者だけで競争させる方式です。地方自治法施行令第167条が定める一定の場合――たとえば契約の性質・目的が一般競争入札に適さないとき、参加者が少数に限られるとき、一般競争入札が不利と認められるとき――に使えます。
- メリット:実績や信頼性のある事業者に絞れるため、品質確保や手続き効率の面で有利。
- デメリット:指名されない事業者は参加できず、競争性・公平性が一般競争入札より下がる。指名の偏りは談合や不公正の温床になりやすい。
事業者側から見ると、「指名される立場」に入っているかどうかが分かれ目になります。入札参加資格の登録や過去の施工実績が、指名名簿に載るための前提になります。
③ 随意契約
随意契約は、競争入札によらず、発注者が特定の相手を選んで直接契約する方式です。地方自治法施行令第167条の2が、随意契約にできる場合を号ごとに列挙しています。代表的なものは次のとおりです。
- 予定価格が一定額以下の少額契約のとき(第1号=少額随意契約)
- 契約の性質・目的が競争入札に適さないとき(第2号)
- 緊急の必要により競争入札に付すことができないとき
- 競争入札に付すことが不利と認められるとき など
少額随意契約と2025年(令和7年)の基準額引き上げ
少額随意契約は、金額の小さい契約まで競争入札にかけるのはかえって非効率なため、見積合わせ等で簡便に契約できるようにする仕組みです。実際に使える上限は、地方自治法施行令の別表第五が示す範囲内で、各自治体が規則で定めます。
この基準額が、令和7年(2025年)4月1日施行の改正(令和7年政令第94号)で、昭和49年以来およそ50年ぶりに大幅に引き上げられました。物価上昇と事務効率化への対応が理由です。地方公共団体の主な改正内容は次のとおりです。
| 契約の種類 | 都道府県・指定都市 (改正前→改正後) |
指定都市を除く市区町村 (改正前→改正後) |
|---|---|---|
| 工事又は製造の請負 | 250万円 → 400万円 | 130万円 → 200万円 |
| 財産の買入れ | 160万円 → 300万円 | 80万円 → 150万円 |
| 物件の借入れ | 80万円 → 150万円 | 40万円 → 80万円 |
| 財産の売払い | 50万円 → 100万円 | 30万円 → 50万円 |
| 物件の貸付け | 30万円 → 50万円 | 30万円 → 30万円(据置) |
| 上記以外の契約(業務委託など) | 100万円 → 200万円 | 50万円 → 100万円 |
※上表は地方自治法施行令別表第五の上限額。実際に適用される基準額は各自治体が規則で定めるため、施行日も自治体ごとに異なります(自治体側で規則改正が必要)。発注先の自治体の最新の契約規則を必ず確認してください。なお国(予決令)の基準額は別建てで、工事又は製造は250万円→400万円などとされています。
随意契約の注意点
随意契約は手続きが速い一方で、競争を経ないため価格の妥当性や公平性の確保が課題になります。基準額の引き上げで少額随意契約の対象が広がったぶん、発注者には公正な運用が、事業者には適正な見積りが、これまで以上に求められます。
(補足)せり売り・プロポーザル・総合評価落札方式
せり売りは、動産の売払いなどで価格をせり上げて契約相手を決める方式で(地方自治法施行令第167条の3)、実務で使われる場面は限られます。
また、近年よく聞くプロポーザル方式(提案内容で選ぶ)や総合評価落札方式(価格と技術提案を総合評価する)も重要です。総合評価は一般競争入札・指名競争入札の枠内で運用され、プロポーザル方式は法的には随意契約の一種として整理されます。「価格だけで決めない」やり方が広がっている、と理解しておくとよいでしょう。
事業者目線:どの方式でチャンスを取りに行くか
- 一般競争入札:まずは入札参加資格を取得・維持することが出発点。資格があれば公告された案件に広く参加できます。
- 指名競争入札:指名名簿に載るために、参加資格の登録と実績の積み上げが効いてきます。
- 少額随意契約:日頃から発注担当に見積依頼が来る関係を築けるかがポイント。2025年の基準額引き上げで対象範囲が広がり、数社の見積合わせで決まる小規模な案件が増えています。小規模事業者にとってはチャンスが拡大したといえます。
まとめ
公共調達は「一般競争入札が原則」で、指名競争入札・随意契約・せり売りは法令が認める例外という建て付けです。それぞれ参加できる範囲と狙い方が違うため、自社がどの方式で受注を取りに行くのかを意識して、参加資格の整備や実績づくりを進めることが第一歩になります。とくに2025年の少額随意契約の基準額引き上げは、中小規模の事業者にとって見逃せない変化です。
入札の全体の流れは「入札の手順」、案件情報の見方は「入札公告の読み方」の記事もあわせてご覧ください。
建設業の事業者が次にやること
- 入札参加資格を登録する:発注機関ごとの参加資格者名簿に載らないと、そもそも入札に参加できません。取引したい自治体・官公庁の資格申請の時期と要件をまず確認しましょう。
- 経営事項審査(経審)を受ける:公共工事の入札参加には経審が前提になります。詳しくは「経営事項審査(経審)とはをご覧ください。
- 実績を積み上げる:少額随意契約や下請からでも施工実績を重ねると、指名競争入札の指名や、参加資格のランク上位につながります。
出典
- 地方自治法 第234条(e-Gov法令検索)
- 地方自治法施行令 第167条・第167条の2・第167条の3・別表第五(e-Gov法令検索)
- 会計法 第29条の3(e-Gov法令検索)
- 総務省「随意契約の基準額の見直しについて」(令和7年)
- 財務省「少額随意契約の基準額の見直しについて」(令和7年)
- 地方自治法施行令の一部を改正する政令(令和7年政令第94号、令和7年4月1日施行)
入札の先へ編集部

